湿度について
快適な家作りに避けて通ることのできない「湿度」について、ピーエス株式会社さんがよくまとめていらっしゃいますので、是非皆さんにもご紹介したいと思います。
建築プロデューサー 上野
出典:ピーエス株式会社
夏の蒸し暑さや、冬に乾燥して喉が痛くなるのは空気中に含まれる水分量の影響です。湿度とは、この「空気中の水分量」を示すものです。
湿度は人や物への影響が急激にではなく徐々に現れるので軽視されがちですが、健康的な生活を行う、あるいは物が持つポテンシャルを最大限に引き出し活用するためには、それぞれに最適な湿度を保つことが大切なのです。
- 湿り空気
- 水分、すなわち湿度を含んだ空気のことです。一般に存在する空気は湿り空気であると考えて差し支えありません。湿り空気に対して、水分を含まない空気のことを「乾き空気」といいます。
- 絶対湿度
- 乾き空気1kgに含まれている水分の量です。単位は[kg/kg(DA)]
- 水蒸気分圧
- 湿り空気中に存在する水分(水蒸気)の分圧です。
- 飽和空気
- ある温度において、もうそれ以上は水分を含むことができない状態の空気のこと。温度が高い空気ほど、飽和空気に含まれる水分量は多くなります。
- 相対湿度
- ある状態の空気の水蒸気分圧と、その空気と同温の飽和空気の水蒸気分圧との比率を%で示した数字です。湿度を表現する最も一般的な方法で、単に湿度というときは相対湿度をさす場合が多く見られます。相対湿度の単位は[%]ですが、relative humidity(「相対湿度」の英語表記)の頭文字を添えて[%RH][%r.h.]などと表記することもあります。
- 湿球温度
- 湿球温度計(球部分を濡れた布で包んだ温度計)が示す温度です。乾燥した場所では、布に含まれる水分が蒸発する際の気化熱で、一般の温度計(乾球温度計)より低い温度を示します。飽和空気の場合は水分が蒸発しないため、乾球温度計の温度(乾球温度)と同じになります。このため、湿球温度と乾球温度を用いて相対湿度を測定することができます。
- 露点温度
- その空気と同じ絶対湿度を持つ飽和空気の温度です。湿り空気を露点温度以下まで下げる、あるいは露点温度以下のものに触れさせると結露が発生します。
- 比エンタルピ
- その空気が持つエネルギーの総量を「エンタルピ」といい、乾き空気1kgあたりのエンタルピを「比エンタルピ[kJ/kg(DA)]」といいます。エアコンでの除湿量を計算するときなどに使う値です。
相対湿度はその空気が含みうる水分量に対する比率ですから、空気温度が高くなって含みうる水分量が多くなると、絶対湿度は同じでも相対湿度は低くなります。ですから冬、冷たい外の空気を部屋に入れて暖房すると、室内が乾燥するのです。
暖房して相対湿度50%を維持するためには、0.0063kgの水分を空気中に補給しなければなりません。これが「加湿」です。
人の健康・快適性を守る理想的な湿度は一般に40~60%RHの状態です。しかしながら、その室内でどんな活動が行われるのか、それによっても適切な温湿度の条件は変わります。各空間での温湿度条件の目安を示しました。
湿度が高すぎたり低すぎたりすると、さまざまな健康障害を引き起こします。湿度が低すぎる場合、浮遊粉塵の飛散が多くなり、また浮遊細菌も増加します。冬、空気が乾燥しすぎている状態が数日間続くと、かぜが流行します。
昭和45年ビル管法および建築基準法において、右表のような空調室内の基準が設定されました。この基準の対象となる建築物は下記のとおりです。これらの条件に対して定期測定およびその報告の提出が義務付けられています。
対象:
述べ床面積が3000m2以上の建築
述べ床面積が8000m2以上の学校
空気が乾燥して相対湿度が低くなると、物体の乾燥が進み、表面が電気を通しにくい状態になって静電気が起きやすくなります。静電気は日常生活での不快感に限らず、電子産業分野での絶縁破壊(半導体)やコンピューターなどの機器の作動エラー、ホコリの吸着などの原因にもなります。人体帯電圧とその障害の程度については、電撃ショックによる不快感は3kV未満であればほぼ解消すると言われています。
乾燥はインフルエンザウィルスの生存に大きく影響します。相対湿度50%以上の環境ではインフルエンザウィルスは長く生存できないことが明らかにされており、インフルエンザ予防の観点からすると、室内の相対湿度は50%以上を保つことが望ましいと言えます。特にインフルエンザ被害が心配される老人福祉施設や保育園などでは、冬の加湿が重要になります。
空気が乾燥すると口や鼻の粘膜が乾燥します。粘膜が乾燥すると吸い込んだ微生物や粉塵などの異物を体外に排出する役目を持つ繊毛の活動が鈍くなり、風邪などの感染に対する防御機能が低下してしまいます。乾燥が進むと風邪やインフルエンザにかかりやすくなるのは、病原菌が増えることだけが原因ではなく、人間の防御機能が落ちることも大きな原因の一つと言えます。
空気の乾球温度・湿球温度・露点温度・絶対湿度・相対湿度などの状態を示した図が空気線図です。「乾球温度と絶対湿度」、「露点温度と相対湿度」など、どれか2つの状態がわかれば残りの状態も簡単に調べることができます。加湿や除湿を考える時には、大変役に立つ図です。
温度22℃
相対湿度50%の空気を
- 加熱すると(1)の方向に変化します。
- 冷却すると(2)の方向に変化します。
- 蒸気式加湿をすると(3)の方向に変化します。
- 気化式加湿をすると(4)の方向に変化します。
- 細霧式加湿をすると(4)の方向に変化します。
- 除湿(冷却除湿)すると(5)の方向に変化します。
加湿方式には3種類あります。それぞれ異なった特徴があるので、目的にあった加湿方式を選ぶことで、よりよい湿度環境をつくることができます。
- 無菌・クリーンな加湿ができます。
- 湿度の要求に対して細かい対応ができます。
- 空気の温度を下げません。
- 大きな電気容量が必要です。
こんな種類の加湿器があります。
- 電熱式 ・・・特に精密な制御ができます。年間の加湿運転が長時間になる用途に。
- 電極式 ・・・メンテナンスが容易です。冬期のみ加湿する用途に。
- 二重管グリッド式・・・蒸気ボイラーがあり、余剰蒸気がある工場、病院、施設に。
- クローズパン型 ・・・パッケージエアコンへの組み込み専用。
- 消費電力が少なく、省エネルギーです。
- 室温を下げる冷却効果(細霧冷房効果)があります。
- 水中のミネラル分も空気中にそのまま放出されます。(クリーンさが要求される時は特に水処理が重要になります。)
こんな種類の加湿器があります。
- 遠心式 ・・・比較的コンパクトに設置できます。小~中規模の工場、低温倉庫に。
- ターボフォグ ・・・少ない電気容量で大容量の加湿ができます。大規模工場に。
- ナノフォグ ・・・細霧式初の事務所向き加湿器です。
- バイオセーフ・エアフォグ・・・エアコンプレッサーがあり、余剰圧縮空気がある工場に。
- 過加湿にならず、近傍を濡らすことがありません。
- 消費電力が少なく、省エネルギーです。
- 湿度はなりゆきになるので、精密なコントロールはできません。
こんな種類の加湿器があります。
- 空気清浄機能付式・・・設置工事がいりません。美術館、博物館に。
- ユニット型 ・・・発熱が大きい産業の場に。
- TID形滴下式 ・・・ダクトへの組み込み専用。暖房時の乾燥防止に。