高断熱住宅で内部結露を招く危ない施工
高断熱住宅で内部結露を招く危ない施工
省エネルギー基準の改正や低炭素住宅の認定制度などにより、住宅の高断熱化は急ピッチで進んでいる。その一方で、内部結露から劣化につながる恐れのある不適切な施工が少なくない。日経ホームビルダーの7月号「高断熱住宅の危ない隙間」から、結露を招く原因を写真で解説する。
以下の16枚の写真は、壁内や床下、小屋裏などの普段見えない場所で、結露が発生するリスクを抱えた施工不良の例だ。既に結露している住宅もある。
内部結露を招くリスクのある16の施工
3つの層が連続する
高断熱住宅で内部結露を防ぐ原則は、断熱層、防湿層、気密層をそれぞれ隙間なく連続させることだ(下の図)。断熱材が部分的に薄かったり入っていなかったりすると、冬季にその部分が冷える。基礎の外周部や窓まわり、配管の貫通部などに気密漏れがあると、外から冷気が入り込んで壁内が冷える。そうした箇所に室内側の隙間から入った高湿な水蒸気が触れると、水蒸気として存在できなくなり結露に至る。
東洋大学名誉教授の土屋喬雄さんの計算によると、120m2の壁に直径36mmの穴(透湿抵抗は5m2hmmHg/g程度)が開いているだけで、1日当たり926ミリリットルの水分が壁に入る(温度と湿度は室内が20℃、60%、室外が0℃、80%の場合)。通気で水蒸気をある程度外に逃がせるが、通気に不具合が生じたり入る量が多かったりすると、壁内にたまる。
防湿層の扱い方は断熱材の種類で変わる。繊維系は水蒸気を通しやすいので、防湿シートを連続させる。防湿シートは気密層の一部を兼ねる。水蒸気を通しにくいプラスチック系は防湿シートが不要だが、断熱材の継ぎ目などに気密テープを張って隙間ができないようにする。
調湿機能を持つ断熱材を使う場合は防湿シートを通常張らないので、断熱層と気密層の連続が重要になる。住まい環境プランニング(岩手県滝沢村)社長の古川繁宏さんは、「大量の水蒸気が壁内に入ると結露しやすくなるので、ほかの断熱材を使用するときよりも壁内を冷やさないような注意が必要だ」と話す。
気密測定で不良精度をチェックする
16枚の施工不良の写真が示すように、3つの層の連続を施工現場で実現するのは案外難しい。結露を防ぐ方法を施工者が正しく理解していない、施工方法が煩雑、専門工事会社に任せ切りできちんと管理していない──など、原因は多岐にわたる。
最近では標準的な施工マニュアルがインターネットで公開されており、それと照らし合わせれば専門家でなくても現場をチェックできる。第三者検査を手掛けるカノム(名古屋市)社長の長井良至さんは、「マニュアルと少しでも違っていると建て主は施工者に不信感を募らせる。勉強不足は許されない」とクギを刺す。
施工精度を確認する方法に気密測定がある。福田温熱空調(石川県白山市)社長の福田重顕さんは、「きちんと施工したつもりでも、気付かない隙間はあるもの。気密測定でそれが発見できる。最近は建て主が気密測定を求めたり立ち会ったりするケースが増えている」と話す。
施工方法の合理化は、施工不良の防止に役立つ。省エネ対策等級には、透湿抵抗の高い断熱材を使うなど防湿層が省ける仕様がある。日経ホームビルダーの7月号「高断熱住宅の危ない隙間」では、内部結露リスクを減らす断熱・防湿・気密の合理的な施工方法と、現場管理の要点を解説している。
2013年9月2日 | 高気密・高断熱 | 高断熱住宅で内部結露を招く危ない施工