HOME > 快適空間創造住宅 > 高気密・高断熱をデザインする > 外皮の熱損失を防ぎ快適さを守る

快適空間創造住宅

高気密・高断熱をデザインする

外皮の熱損失を防ぎ快適さを守る

1. 開口部の断熱

外皮の熱損失を減らし快適な空間を作るためには
開口部の断熱が非常に重要!

(1)熱貫流率の比較

高断熱住宅を考えるときに重要なのは熱損失の少ない外皮計画でした。その中でまずは開口部である窓を見ていきたいと思います。

住宅の中で窓が占める断熱性能の役割とはどのくらいなのでしょうか。木造住宅の壁などの断熱性能と開口部の断熱性能を基準値で比較したのが表1です。窓の熱貫流率が2.33~6.51[W/m²K]に対して、壁は0.35~0.53となり、窓は躯体よりも7~12倍も熱を通しやすいということになります(図 1)。

【表 1 次世代省エネ基準(H11年基準)の熱貫流率基準値[W/m²K]】
  I II III IV V VI
開口部 2.33 2.33 3.49 4.65 4.65 6.51
躯体(木造住宅) 屋根・天井 0.17 0.24 0.24 0.24 0.24 0.24
0.35 0.53 0.53 0.53 0.53 0.53

図 1 全て充填断熱工法の組合せ例
図 1 熱貫流率基準値の比較

(2)暖房熱損失の比較

次に暖房時の熱損失の割合で開口部の影響を確認してみましょう。

開口部からの熱損失が住宅全体の熱損失のうちどの程度占めるかを計算により求めたのが図2です。断熱性能がAからDに向上するに伴い、住宅全体の暖房熱損失は減少しますが、開口部の熱損失の割合は大きくなります(AからC)。Cでは約半分が開口部からの熱損失になっています。このことから、開口部の断熱性能が住宅全体の熱損失に与える影響が非常に大きいことが分かります。

Dは省エネ基準レベルよりも高性能の窓を用いた場合です。窓からの熱損失も減少し、住宅全体で見ても熱損失が減少しています。各部位からの熱損失の割合も他に比べて均一化され、バランスが良くなっています。

住宅全体の断熱性能向上を考える上で、開口部は非常に重要な役割を担っていることが判ります。

図 2 全て外張断熱工法の組合せ例
図 2 暖房熱損失の割合

(3)冷房熱損失の比較

一方、図3は冷房時の熱損失の割合を示したものです。暖房時と同様にAからCに断熱性能を向上させるにつれて住宅全体の冷房熱損失は減少しますが、開口部の割合は増加しています。ただし、Dの高性能サッシ(樹脂+LowEガラス)は暖房時の熱損失を51%から34%まで大きく減少させていましたが、冷房時は69%から67%のわずか2%の効果しか得られていません。Dの高性能サッシ(樹脂+LowEガラス)は、暖房の熱損失を防ぐ効果があっても、冷房の熱損失を防止する効果は少ない仕様であることが分かります。

冷房に効果的な開口部特性は「日射遮蔽(以下、"遮熱"と称します)」です。Dの高性能サッシは、断熱性能は高いのですが、遮熱性能は一般的なものです。遮熱とは、日射を遮り、冷房の負荷を減らす有効な対策です。"よしず"や"すだれ"は伝統的な遮熱手法の一つで、風は通しますが、日射を程よく遮りながら、風流な景観を得ることができます。現在では、この"よしず"や"すだれ"のような効果(風流さはありませんが…)を窓ガラスだけで得ることができるガラスも開発され流通しています。

図 3 冷房熱損失の割合
図 3 冷房熱損失の割合

2.断熱施工

外皮の熱損失を減らし快適な空間をつくるためには
壁、天井、床の断熱施工が非常に重要

断熱設計といいますと、とかく断熱材の種類や厚さが大事と思われますが、最も大事な事は『断熱層の連続性』です。断熱層は適切な断熱性能を有する壁や天井・屋根・床などの部位の事です。したがって、断熱層は断熱だけでなく、気密や調湿性能も有しています。この断熱層を、断熱の対象となる空間を切れ目無く覆いつくす事が断熱設計の基本であり、これを『断熱層の連続』と言います。

(1) 連続した断熱層で対象となる空間を全て覆う

図 1 断熱する空間と断熱しない空間の区分の例
図 1 断熱する空間と断熱しない空間の区分の例

断熱の対象となる空間を覆う全ての断熱層、すなわち壁や天井・屋根・床などの部位(断熱層)を、「断熱対象部位」と言います。断熱対象部位は、屋外と断熱空間(室内)を熱的に区分する意味で「熱的境界」とも言います。したがって、断熱設計の第1ステップは、適切な断熱性能を必要とする室内空間と、それを必要としない空間を区分し、断熱対象部位(熱的境界)で明確に区分することです。

一般に、居間、寝室などの居室のほか、廊下、便所、浴室などの屋内の空間全てが熱的境界で断熱空間として区分します。また、1階と2階の間の天井裏も断熱空間とします。そのほか、屋根断熱における小屋裏、基礎断熱における床下などのように断熱工法によって断熱空間として扱う場合もあります。

図1では、屋外扱いとした方が都合がいい車庫を熱的境界の外気側空間としています。

(2)断熱対象部位の取り合い部で断熱欠損、隙間が生じないようにする

断熱層の連続において重要なポイントは、断熱対象部位の取り合い部です。木造、特に在来軸組み構法では、柱や梁施工のあとに床や天井が施工されるため、壁(外壁、間仕切り壁)と床、壁と天井の取り合い部において断熱欠損や隙間が生じやすい構造となっています。断熱欠損や隙間が生じると、隙間風の侵入や結露の原因となりますので特に注意が必要です。

図2は断熱欠損が生じている悪い例を図示したものです。円内のような断熱欠損や隙間が生じないように施工することが必要です。

図 2 在来軸組み構法における取り合い部の断熱欠損、隙間の例
図 2 在来軸組み構法における取り合い部の断熱欠損、隙間の例

また、図3は間仕切り壁と床、間仕切り壁と天井の断熱施工の悪い例と良い例を示したものです。悪い例では、間仕切り壁の上下端が床下空間と小屋裏空間に開放されていますので、床下から小屋裏に向かって床下の冷気が間仕切り壁内部を流れることになります。

また、床と天井の断熱層が連続していないため、この部分からの熱損失が大きくなります。一方、良い例では、間仕切り壁の上下端の"間仕切壁受け材"と断熱材の施工によって、壁内気流防止と断熱層の連続性を確保しています。

図 3 間仕切り壁と床、間仕切り壁と天井の取り合い部の断熱施工
図 3 間仕切り壁と床、間仕切り壁と天井の取り合い部の断熱施工

3. 断熱の性能

住宅の断熱性能を表す数字にはどんなものがある?

最近、住宅の断熱性能を表すものとしてテレビCMや広告などでもみかけるようになってきた熱損失係数"Q値"。実際、それらは何を表したものなのでしょうか?今回は、様々な断熱性能を表す数字を紹介します。

(1)断熱性能を確認する

住宅の断熱性能を確認するにはいくつかの方法があります。大別すると、「(1)住宅全体で確認する方法」と、「(2)部位ごとに確認する方法」です。

(1)の住宅全体で確認する方法は、壁や屋根、床、開口部などの断熱性能を一まとめにして確認する方法です。したがって、大きな開口部が欲しい場合、開口部によって弱くなった断熱性能を壁の断熱性能を上げて補う事も可能です。建物全体の断熱性能を計画的にコントロールすることができるので、費用対効果を考慮した計画に向いています。

一方、(2)の部位ごとに確認する方法は、壁や屋根・床・開口部などの部位ごとに断熱性能を確認するものです。部位ごとに一定以上の断熱性能を満たそうとする為、(1)の住宅全体で確認するものに比べて融通が効かないのが欠点ですが、各部位の断熱水準を確実に高める方法です。

(1)住宅全体で確認する方法 A.年間暖冷房負荷(冬、夏) B.熱損失係数(冬)と夏期日射取得係数(夏)

(2)	部位ごとに確認する方法 C.躯体各部位の断熱性能(冬)D.開口部の断熱性能(冬)E.開口部の日射遮蔽性能(夏)

これらは、「省エネ法の省エネルギー基準」「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」「住宅金融支援機構」において定められている基準の種類と同じです。上記の確認方法は、住宅の断熱性能の評価方法として一般的に用いられています。

(2)冬の性能、夏の性能

断熱性能の確認方法には、主にの暖房エネルギーの省エネ性や防寒対策の程度を確認する方法と、主にの冷房エネルギーの省エネ性や防暑対策の程度をみる性能の二種類があることに注意してください。

  • A の「年間暖冷房負荷」は、その名のとおり冬(暖房)と夏(冷房)の両方の性能を表しています。
  • B の場合、冬のための指標として熱損失係数(Q値)が、夏のための指標として夏期日射取得係数(μ(ミュー)値)が用いられます。
  • C の躯体各部位の断熱性能と D の開口部の断熱性能は、各部位の断熱性能を確認する冬の指標となります。
  • D の開口部の日射遮蔽性能は、室内に侵入する夏の日射の遮蔽度を表す夏の性能です。

上記のように、冬と夏の性能を個別に表すものが多いのですが、実は互いに関連しています。「あちらを立てれば、こちらは立たず」というものです。

冬対策として断熱性能を高くすると温かく暖房エネルギーの少ない住宅となりますが、室内に熱がこもりやすくなるので夏は暑くなりやすく、冷房エネルギーも増加する可能性があります。夏は窓に日射遮蔽対策を施すこと(例えば、遮熱ガラスの採用やブラインドの設置、庇や軒の出による適切な日除け等)が断熱強化よりも効果的です(もちろん断熱も重要です)。一方、夏を意識しすぎて開口部の日射遮蔽を強化しすぎると、冬の暖かさに大事な日射を十分に取り入れる事ができないかも知れません。

このように、暖房を立てれば冷房が立たず、冷房を立てれば暖房が立たずのように、断熱と日射遮蔽(遮熱とも言います)は相反する効果を生じる場合があります。

冬も夏も省エネで快適な住宅を造るためには、断熱性能の向上と日射遮蔽などの夏対策の両面作戦でバランスのとれた計画をしなければなりません。

図 1 省エネと居住環境に影響する建物の断熱・遮熱性能
図 1 省エネと居住環境に影響する建物の断熱・遮熱性能

出典:「住宅の熱環境計画 平成11年省エネルギー基準に基づく快適な住まいづくり」財団法人 建築環境・省エネルギー機構

今回は冬対策としての住宅の断熱性能をご紹介します。夏対策については、窓に関すること(日射遮蔽等)が中心となるため、別途開口部の回でご紹介します。

4. 断熱材の種類

(1)素材による分類

断熱材はその内部に空気を固定しており、その固定された空気が熱を伝えにくくしています。(空気が固定されていないと熱によって空気の対流が生じ、この対流で熱が輸送されて断熱材の役割をはたしません。)

この空気を固定する方法は断熱材の素材によって異なる事から、断熱材は素材で分類することができます。

図1は断熱材を素材によって分類したもので、素材によって"細かい繊維の間に空気を閉じ込める繊維系断熱材"と、"独立した気泡の中に空気を閉じ込める発泡プラスチック系断熱材"の二つに大別できます。繊維系断熱材は更にガラス繊維のような無機繊維材と、セルロースファイバーのような木質繊維素材に分類できます。

図 1 断熱材の素材による分類
図 1 断熱材の素材による分類

(2)形状による分類

繊維系断熱材は綿のようなものですので、基本的には形状を有していないのが特徴です。一方、発泡プラスチック系断熱材には、工場で成型されて出荷されるボード状の製品の他、現場発泡の断熱材があります。現場発泡の断熱材は現場にて吹付け施工されますので、形状を有していない断熱材です。

建物の構法や施工部位の形状・納まりに適した断熱材を選択するには、断熱材の形状が重要です。図2に形状による分類を紹介します。

図 2 断熱材の形状による分類
図 2 断熱材の形状による分類

以上出典:すむすむ住まいと暮らしの総合サイト

ページの先頭に戻る